毎日新聞 くらしナビに「ふくしまうた語り」が掲載されました。

「さあこれからだ」

鎌田實

昨年の暮れ、歌手の加藤登紀子さんから連絡があった。
年末恒例の「ほろ酔いコンサート」に来てくれないか。
舞台に上がって、お登紀さんとトークをしてくれないかー
という依頼だった。
それだけではない。
「できたら詩を書いてほしい」と言われたのだ。
「ホウレンソウの悲しみ」という詩を書いた。

——————————————
放射能に汚れたホウレンソウの悲しみがわかるか。
安心して食べてもらいたいと思ったのに
人々の心を不安にした
ホウレンソウは悲しいだろうな
——————————————

お登紀さんは泣きながら読んだそうだ。

コンサート当日、ぼくは会場の大阪芸術劇場に行った。
開演2時間前だった。ぼくは、お登紀さんのギターで詩を朗読するのかな、と心の準備はしていた。
ところが、行ってみると、ぼくの詩に続ける形で、お登紀さんが曲をつけていた。
ぼくが詩を朗読し、それにお登紀さんの歌がコラボするーーというスタイルの作品になっていた。

反応がすごかった。2000名のお客さんが気に入ってくれたのだ。
コンサートの打上で、お登紀さんに声をかけた。
「福島の子どもを助けたい。お金が欲しい。CDを作ろう!ボランティアしてください」
熱く熱く夢を語った。昔はこうやって、女の人を口説いたものだなぁ・・・と、しみじみと思い出しながら。
「いいわよ」
返事は簡単だった。
大津波の後、何度も何度も雪が降った。
放射能を含んだ雪が、畑や森や川や海や町を汚した。
2011年3月、忘れられない雪になった。
15歳の女の子が、ぼくに聞いてきた。
「私、大人になって、結婚して、赤ちゃんを産めますか?」
子どもたちを助けてあげたい。
心の中で誓った。2011年、忘れられない重い約束になった。
約束を守りたいと思い続けてきた。その夢が、一歩実現に向かったと思った。
どんなアルバムにするか。
福島の詩人の詩を使いたい。
旧知の和合亮一さんに電話した。
「CDの収益は全て福島の子どものために使う」と伝えたら
「努力したい」と返事を頂いた。
ぼくらが選んだのは「貝殻のうた」という詩だ。
——————————————
命よ この星よりも 重たい命
命のはかなさを知って 泣いているあなた
私も 共に泣きましょう 共に
あなた あなた 大切なあなた
——————————————

これ以上はない、溢れるほどの優しい言葉たちが和合さんのツイッターで流れたのは、2011年4月25日のことだった。
翌26日の未明まで、詩は次々に発表されていった。
そう、偶然だ。
それは25年前、チェルノブイリ原発が爆発したのと同じ日だった。

あのすさまじい光景のなかで、みんなが生きる力を失っている時、
「あなた あなた 大切なあなた」と呼びかける和合さんの温かな言葉に、
たくさんの人が救われた。
その言葉たちをツイッターで見ていたのが、作曲家の伊藤康英さん。
とっさに、曲を作ろうと思ったそうだ。
ちょっと疲れた人たちの心がふわっと温かくなるような歌い方で、
お登紀さんがささやくように歌ってくれた。
素敵な曲になった。
もう一人ご登場いただいたのが、若松丈太郎さん。
福島県南相馬市に住んでいる77歳の詩人だ。
若松さんの「神隠しされた町」は、福島第一原発事故の17年前に作られたものとは、とても思えない。
「4万5千人の人びとが、たった2時間の間に消えた」という衝撃的な書き出し。
双葉町、大熊町、小高町、浪江町、広野町・・・。原発から30キロ圏内のいろいろな町の名前が語られ
「そして私の住む原町」と続く。

原発事故の後、ぼくは許可を得て原発から20キロ圏内に入った。
街には人っ子一人いない。「神隠し」が本当に起きたのだ。
若松さんの詩はさらに続く。

神隠しの街はこの地上に もっともっとふえていくだろう
私たちの神隠しは 今日すでにはじまっている

詩人の想像力は「想定外」をきちんと想定していた。
曲をつけるにはむずかしい詩に、お登紀さんは素敵なメロディーを乗せてくれた。
たくさんの方に「神隠しされた街」を聴いて欲しいと思っている。
「語り」と「歌」の両方を中心に据えた、素敵なCDができたと思う。
たくさんの人に応援して欲しい。

日本のリーダーたちは今、必死になって何事もなかったかのような「偽装」に努めている。
だが、今まで通りでいいはずはない。
日本の新しい生き方が問われている。

福島の子どもを助けるために作った新しいCD「ふくしまうた語り」(1500円)
ぜひぜひ応援してください!
お問い合わせはJCF(電話0263-46-4218)

ネットでのご購入はこちら

ページトップへ
  • チェルノブイリ
  • 福島支援
  • イラク支援