イラクでは以前から中央政府に対する不満から自治区化を推進しようとする動きが見られます。
先週バスラ県では活動家たちが空港や石油精製施設などの公共施設にに自作の旗を掲げてバスラの自治区化を求める運動を起こしました。
彼らが作成したバスラ自治区旗は青、白、緑の三色で構成されており、青は海を、緑は自然を、そして白は平和をあらわしています。
また中央にには椰子の派との石油の雫のシンボルが描かれています。
また活動家たちはバスラ県の自治区化を求めるために署名を集めています。自治区形成に必要な条件の一つにバスラ県内の有権者の2%の署名を集め、独立選挙委員会に提出するとバスラ県の自治区化を問う住民投票を行うことができるようになります。そして住民投票で過半数の賛成を得ることができればバスラ県は自治区として中央政府の権限からこれまでよりも大きく独立することができるようになります。(県議会議員の3分の1の同意を得て、中央政府に自治区化を要求するという手段もあるようですが、これまでマリキ政権によって三度拒否されました。)
こうした自治区化の動きの背景には中央政府の政治に対する不満、特に政治においてバスラの周辺化を懸念する声やまた、自治区として既に独自権限を有することに成功したクルド自治政府を羨む感情が自治区化運動を後押ししているようです。
バスラ出身の政治家に附与される大臣のポストが少ないこと(現在バスラ出身の政治家が担うのは地方自治省と通信省の二つ)に加え、このポストが削減対象となる懸念があること、治安部門の責任者をバスラ県以外の出身者に与えられていること、また過去二年間に渡り1バレル当たり5$あるはずのの石油収入が政府から支払われていないことなどがあるようです。
南部のバスラでこのような自治区化推進の動きがみられる一方、北部ニーナワー県でも同様の動きがみられます。モスル危機によってイラク中央政府が国防能力の脆弱さを露呈したためキリスト教徒の間では自ら武装化して自分たちの身を守るべきだという主張が高まりつつあります。アメリカに本拠地を置くあるキリスト教市民団体(リーダーはバグーダード出身)は、サハル・ニーナワー地方の防衛を央政府やクルド自治政府に頼ることはできない。今後は欧米からの資金協力を得て、キリスト教徒による警備隊を編成し、自ら国防にあたる必要があると話しています。またそのためにニーナワー県の一地方であるサハル・ニーナワー地方(ティルケイフ郡、ハムダーニーヤ郡、シャイハーン郡)を県に格上げして自治権の拡大を図るべきであるとしています。
中央政府に対する不信から自治区を形成しようとする動きは他にもスンニ派イスラム教徒が住む地域などでも見られました。イラク戦争以降、イラクは一応民主国家として再出発しましたが、様々な点においてイラクは国家が持つ機能をきちんと果たせているとは言い難い状況であり、イスラム国との戦闘が行政の機能不全に拍車をかけています。
私は個人的に政治的な動きにあまり関心を払わないようにしていますが、やはり政治的不安定さが国内避難民の状況に直接的にも間接的にも大きな影響を及ぼしますので今回の状況についても少し懸念しています。主義主張がどうであれ行政サービスが円滑に行われ市民や国内避難民の生活が早く楽になるように、また安定するように祈るばかりです。
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