~イラクの医療危機を探る旅7~

 

イラクの薬品製造事情

 

また、薬品需要のリストにブレや変更が度々生じることも需要の把握に遅れが出る理由である。

薬局には消費期限切れのものや安全性が確認できないような密輸薬品がいっぱいだ。

 

しかしイラクの自国生産のみで薬品需要を賄うことはできない。現在のイラクは中東でその医療が羨望されていた60年代や70年代とは全く異なるのだ。

 

かつてイラクは薬品生産においてはエジプトに次ぐ第二位であった。

しかし今は大きな2つの国営工場が自国産業の衰退を見届けるように残っているだけだ。

 

2つのうちの1つはモスルに存在する。しかし、後にイスラム国との戦争により破壊された。

 

2つめはバグダードの北部サーマッラーにある工場で、旧式の機械が稼働する工場だ。
ここでは女性たちがブリスターパック(薬品の包装パック)をすくい上げ、ゴムバンドで一つにまとめる作業をし、男性はその束を箱に詰めている。

 

 

 

この国営の薬品会社「State company for Drug Industry=SDI/ الشركة العامة لصناعة الأدوية」は50年前に設立された。
同社の理事長であるライス・アブドゥルラフマーンは

 

「かつては300種類の薬品を製造していたが、今では140種類の基礎的な薬品しか製造しておらず、生命の危機にある患者を救うような薬品は製造していない」

 

 

米国がイラクに侵攻する前の2002年と比べて2019年の薬品の生産は80%減少している。

 

ライス・アブドゥルラフマーン曰く、
「イラクが潜り抜けてきた苛烈な時代のせいだ。イランとの長期に渡る戦争、13年に及ぶ経済制裁、そして2003年以後続いた混乱は当然影響を及ぼす。どんな国であれ、経済や政治が安定しなければ産業は衰退する。」

 

イラクには民間企業が保有する薬品工場が17存在する。しかし、それも時代遅れの技術で生産する基礎薬品ばかりだ。

 

専門家は「汚職や高額な税金、生産に耐えない電力網、また貧相なサプライチェーン、不安定な治安、これらすべてが生産事業をここ数十年停滞させている要因だ」

 

自国企業でカバーしているのは薬品需要の8%未満だ。企業は十分な原材料、技術そして道具を持っていない。。

 

アッバース「イラクは薬品生産における老舗だ。エジプトに次いで2番目薬品生産に進出した国であり、サーマッラーの薬品工場はこの分野のパイオニアだったが、今はこの有様だ。」

 

この工場はかつてイラクの国内需要を満たし、さらに東欧やアラブ諸国に薬を輸出するほどの工場だった。

 

(続く)

これはロイター通信が作成したイラクの医療事情レポートを翻訳したものです。イラクの医療事情問題の把握にとても役立ちます。

アラビア語版
https://ara.reuters.com/article/topNews/idARAKBN20P1ZF

英語版
https://www.reuters.com/investi…/special-report/iraq-health/

前回までの記事

1 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4456
2 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4504
3 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4521
4 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4565
5 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4584
6 http://jcf.ne.jp/wp/archives/4591

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