<イラクは地域の医療後進国>
イラクの医療制度は危機に瀕している。イラクでは他国との比較可能な統計情報の入手が困難で、手に入る統計は局所的なものばかりである。かろうじて入手可能な「平均寿命」、「妊産婦と乳幼児の死亡率」、「保健関連支出」などのデータを他国と比較するとイラクは地域の平均を大きく下回っているという。
イラク南部の最大の都市バスラはイラクの経済首都であり、歳入の90%を賄うほどの石油を輸出している都市だ。 しかし、市内の医師や患者の証言、また保健省のデータによると医療サービス体制は慢性的に資金不足で、医師や看護師は過労状態。
病床不足や人員不足をイスラム国との戦争のせいにはできない。過激派の侵攻で荒廃した他の地方とは対照的にバスラでは軍事衝突は起こらなかったからだ。患者や医師たちは医療体制の問題は中央または地方レベルでの汚職や行政上の不手際によるものだと指摘する。
ロイター通信調べによると、2015年から2017年にかけてバスラ住民1人当たりに対する政府保健関連の平均支出は平均71ドル/年間であり、これはイラク全土の平均のおよそ半分程度である。
またバスラは医療機器不足にも陥っている。先進国では住民100万人あたりのCTスキャナーは34台(アラビア語版記事では26台)、MRIは24台(アラビア版記事では16台)あるのに対し、バスラではCTスキャナー3台、MRIは1台という先進国とは比較にならない少なさだ。
ムスタファの父は、バスラ小児がんセンターでの治療の質について懸念を抱く。
同病院のマネージャーであるアリー・アル・アイダーニによると十分な病院運営を行うには2019年に保健省から割り当てられた予算の4倍以上の予算が必要であるという。また同病院には特定のがんを発見するのに役立つPETスキャンもなく、また十分な抗ガン剤もない。
薬不足に悩まされながらも病院運営をなんとかやりくりするため、マネージャーのアイダーニーは募金活動を行っている。当局が不正を疑い、幾度なく捜査にやってくるが最終的には注意で終るという。
「そう深刻なものではないよ」
とアイダーニーは語るが、こう付け加えた。
「今のところはね…」
彼の上司は病院をやりくりしていくために、臨機応変に行動することも必要だと考えている。その結果、当局が捜査に入ることもあるがそれ以上のことはしないそうだ。保健省の高官もこのようなことが時々起こることを承知している。
その5へ続く
前回の記事 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4521
これはロイター通信が作成したイラクの医療事情レポートを翻訳したものです。
イラクの医療事情問題の把握にとても役立ちます。
アラビア語版https://ara.reuters.com/article/topNews/idARAKBN20P1ZF
英語版https://www.reuters.com/investigates/special-report/iraq-health/
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