イラクの医療危機を探る旅11 ~ムスタファの最後~
ムスタファは数分おきに痛みに身もだえするが、めったにそれを声にだすことはない。ロイターが今年の1月にムスタファを訪れた際、ムスタファの父が彼のことを獅子と呼んでいたように彼は強い。
ムスタファは、普段から黙って大人たちの話を聞いている。治療の日付や薬品の値段をただす時のみ口を開く。
ムスタファの頭上にはいくつも写真が飾られている。まだ彼が学校に行くことが出来ていた頃のものだ、学生服をまとい、まだ髪がある。他にもバリッとしたスーツにネクタイ姿のムスタファもいる。
父は言う「ムスタファは外で遊んだり、運動したりすることができない。ただ家の中で携帯ゲームをして過ごしているんだ」
実は父アブドッラーはこれ以上ムスタファの治癒に希望を託してはいない。息子がせめて痛みから解放されて生きることさえできればと願っている。
「今は夕方で祈りが届く時間になった。神様、私はもう息子が治ることは望みません、ただ彼がいっときでも痛みから解放されればそれでいい。彼はろくに眠ることもできません。私や妻もそうです。だからいっときで良いから彼をぐっすり眠らせてやってください。」
2月の初旬ムスタファは亡くなった。彼の写真は病院に飾られることはなかった。
病院では病から回復した子供達の写真のみが飾られるようになったからだ。
(終)
※ムスタファ家族についてはは過去記事の1,3,4,9をお読みください。
これはロイター通信が作成したイラクの医療事情レポートを翻訳したものです。イラクの医療事情問題の把握にとても役立ちます
アラビア語版
https://ara.reuters.com/article/topNews/idARAKBN20P1ZF
英語版
https://www.reuters.com/investi…/special-report/iraq-health/
過去の記事
1 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4456
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