ヒバク国としてのイラク

劣化ウラン弾

劣化ウランとはウラン鉱石を核兵器や核燃料として使用するために濃縮する過程で生ずる残留物です。この劣化ウラン合金は貫通性に優れているため主に対戦車砲弾などの兵器として用いられます。

イラクは度重なる戦争により何度も劣化ウラン弾の被害に曝された史上類を見ない国です。湾岸戦争(1991年)、イラク戦争(2003年)で使用されたことは良く知られていますが、近年では対イスラム国戦争(2015年)にもおいても劣化ウラン弾が使用されたことが明らかになっています 。

また2019年にはイラク政府がバスラ県の汚染された戦争廃棄物を秘密裡にアンバール県に移送し埋め立てる命令を出しましたが、アンバール県側は治安部隊を編成し同県への廃物移送を差し止める事態が発生するなど汚染廃棄物処理問題は依然として残っています 。

イラク政府の主張によるとイラクにおける汚染地域はおよそ300とされていますが、国連の報告によると数千に昇るとされており 、そうした汚染地域が十分に除染されていないとされています。

劣化ウラン弾など戦争による環境破壊の影響は戦争から時を経て収束したわけでは決してなく、時を経るほどにその影響が深刻であることがわかるようになっています。

(映像 イラク・ファッルージャでの先天性奇形症が15%に  2017 Skynews arabiya より)


(映像 「終わりなき戦争 ~イラクにのしかかる劣化ウラン弾の遺産~」より)

史上初の原子力研究所に対する直接的軍事攻撃

またイラクは1960年代にフランスの協力により建設されたトゥウェイサ原子力研究所という核施設を保有していましたが、イラン、イスラエルにより空爆される(オペラ作戦1981年)という人類史上初の核施設に対する直接的軍事攻撃を受けた国でもあります。

これに対して国連は安保理決議第487 によりイスラエルを厳しく批判し、また当時の日本政府は外務大臣談話 を通じ「この機会を通じ核兵器の拡散は世界の平和を脅かすものであり、核不拡散条約に加入していない国が1日も早く同条約に加入することを希望するとの立場を改めて確認する」とその立場を表明しています。

また現在も続く同研究所の原子炉解体作業に従事する職員や労働者の放射線被ばくの実態が2019年のイラク議会においても問題とされました 。

(映像 トゥウェイサ原子力研究所 ~作成中~)

参考文献

  1. 米軍、 対IS空爆で劣化ウラン弾使用 国防総省(外部WEBサイト)
  2. アンバール県放射性廃棄物の受け入れを拒否(外部WEBサイト)
  3. UNEP 報告書「イラクにおけるホットスポット評価」2005(外部PDF)
  4. (7)イスラエル機によるイラク原子炉爆撃に関する国連安全保障理事会決議487(外部WEBサイト)
  5.  (5)イスラエル機によるイラク原子炉爆撃についての外務大臣談話(外部WEBサイト)
  6. イラクのチェルノブイリ(外部WEBサイト)
ピンピンひらり