イラクのコロナ禍と緊急食料支援 ~ある家族との遭遇~
イラクでもコロナ対策による自粛で市民の経済活動に影響が見られ、困窮する人々が増えてますが、特に2014年のイスラム国との衝突によりモスルから逃れて来た避難民が特に深刻な影響を受けています。
そこでJCFでは現地スタッフのバン・ガーニムと現地教会のザカリヤ神父らと協力し、エルビル市郊外の8地区に住む避難である35家族を対象に緊急食糧支援を実施ました。一家族あたり約3500円相当の食糧(卵、紅茶、乾麺、クスクス、食用油、食器用洗剤など)、また赤ちゃんや幼児がいる家庭には必要物資購入のための現金を支給しました。
モスルなどから逃れて来たキリスト教徒、イスラム教徒、ヤズィード教徒に加え、シリアからの避難民にも支援を届けました、職を失った賃金労働者の家庭、また2人の障がいを持つ子どもを抱える家庭(本号表紙写真)、一つのアパートに複数家族で同居する家庭など、各家庭それぞれ事情を抱えています。
そのような中とある家族に出会いました。ラディーフ・ユースフ・ハーシム、現地では「学生たちの殉教者」と呼ばれた男性の遺族です。このラディーフ氏に関する報道がありましたので少しご紹介します。
(引用) 学生たちの殉教者 ラディーフ・ハーシム 2010年5月2日の朝、数百人の学生を乗せたバスの車列がバグディーダからモスル大学へ向かっていた。しかし突如、バスを狙った路傍爆弾が爆発し、バスは緊急停車。幸いにもその爆発で負傷などは生じなかったが現場は騒然とした。 そこへ一台のピックアップトラックがやってきてバスの車列に寄せる形で停車した。たまたま現場に居合わせたラディーフはそのトラックを不審に思い、警戒していると、トラックの運転者が車を降りて去ろうとした。 ラディーフが去ろうとする運転手に「なぜあそこに車を停めたんだ?」と聞くと、彼は「燃料切れだ。」と答えた。答えを聞くや否やラディーフはバスを降りようとしていた学生たちとバスの運転手に向かってに「バスを降りるな!そのままここを離れろ!」と叫んだ。その車にも爆発物が積まれていると察知したのだ。
彼がバスにその場を離れるよう叫び続けている最中、その車は爆発した。幸いにもラディーフの必死の呼びかけでバスは爆発から免れ、学生たち数百人の命は救われた。しかし、その場で呼びかけを続けたラディーフと近くにいたモスル大の女学生サンディ・シャビーブ・ハーディの2名が亡くなった。容疑者は混乱の最中行方をくらました。
イシュタールTV「学生たちの殉教者 ~目撃証言より~」
https://www.ishtartv.com/viewarticle,28953.html
バン・ガーニムがラディーフ氏の遺族を訪問した際の様子を伝えてくれました。
ラディーフ氏の奥様は悲しみを胸の内に秘め、寡黙な様子でした。私が「あなたの人生はまだまだこれからよ。」と伝えると、彼女は少し涙し、「夫はまだ私の心の中で生きていて、決して忘れることはできない。」と呟きました。 ラディーフ氏が身挺して学生たちのた犠牲になった時、娘のラフィーフはまだ彼女のお腹の中にいましたが、今では大きくなっていました。(ラディーフ氏の家族の写真は家庭のご事情により掲載は控えさせていただきます。)
モスルが解放されてから(2017年7月)から3年近く過ぎようとしていますが、帰還できずに避難生活を続ける人々がまだまだたくさん存在しています。 また避難民もイスラム国だけでなくラディーフ氏の家族にようにそれ以前の問題によって避難してきた家族もたくさん存在しています。 こうした避難民家族がいずれ元気に故郷に帰れるよう皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
JCFでは同地区に住む避難民の方々に医療支援も行っていますのでこちらもどうぞご支援をよろしくお願いいたします。
ピンピンひらり
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