ブックタイトルグランドゼロ107号

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概要

「グランドゼロ」は、訪問団やセミナーなどJCFの活動の様子、事務局からのお知らせなどを掲載した季刊誌です。

42連 載 随 筆宮尾 彰声を運ぶ器  ~はじまりの五年を省みて~NO.62 二〇一五年、ノーベル文学賞を受賞したベラルーシ在住の作家スベトラーナ・アレクシエービッチは、授賞式の前に行った記念講演を、次の言葉から始めました。「私はこの演壇に一人で立っているのではない。数百の声に私は囲まれている」 彼女の言う『小さくて偉大な人々』は、歴史の闇に葬り去られつつも、何者にも奪うことの許されない固有の人格を有し、かけがえのない生活を営むための場を与えられた存在として、永遠に記憶されなくてはなりません。 そうした一人ひとりの、さまざまなかたちで強いられた犠牲や分断や差別の傷跡から「生きた精神と身体の証し」として立ち昇る「声」が、私たちには託されています。影山美知子著『飯舘村を歩く』(七つ森書館刊) 永年都立の高校で古典を講じた著者が、退職後に教え子や知友に宛てた、地味で虚飾の無い、実に親密な紀行文。 地元飯舘村の郷土史資料を周到に読み込んだ上で、自ら現地に足を運び、五感を駆使して感受した村の歴史と伝承の厚みを、全編を貫く精緻な文体で伝えています。 白は く眉びは、八十歳を過ぎた農夫が、天来の山の幸を育んで立てる生なりわい業について惜しみなく披ひ れ き瀝した聞書きです。 カラスウリ、ヨモギ、ガエルッパ、タンポポ、ゲンノショウコ、カキドオシ、センキュウ、ギョウジャニンニク、タラノメ、ヤマユリ、アピオス、ウルイ、コゴミ‥‥。 「オレはカネを使わずに、工夫するんだ」 自然の恵みを享うけた手仕事は、永久に喪われました。