ブックタイトルグランドゼロ107号
- ページ
- 31/58
このページは グランドゼロ107号 の電子ブックに掲載されている31ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは グランドゼロ107号 の電子ブックに掲載されている31ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
「グランドゼロ」は、訪問団やセミナーなどJCFの活動の様子、事務局からのお知らせなどを掲載した季刊誌です。
31では、放射性物質による内部被曝による奇形、精神運動発達遅滞、小児がん等について調査が行われてきた。この中で、驚異的な数の患者が発生したのは小児甲状腺がんである。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアで甲状腺がんに罹患した小児の患者数は約7000例に及び、乳頭癌が多いと報告されている。甲状腺がん患者の甲状腺被曝線量は平均490マイクロシーベルトであった。原爆投下後に発生した白血病患者の数は被爆後3年してから増加し始めた。一方、チェルノブイリ原発事故後の小児白血病やがんの増加については、現段階では一定の見解は得られていない。 ベラルーシ共和国の2病院との遠隔医療ネットワークシステムは、その後、当科の無菌室内で造血幹細胞移植を受ける小児が院内学級の先生や友人などとの映像と音声により交流できるeーMADOの構築へと発展した。B イラク共和国に対する小児白血病の遺伝子診断支援 イラクでは1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争で投下された大量の劣化ウラン弾などによる白血病などの健康被害が報告されている。2007年から当科はJCFなどのNPO団体の医療支援活動に参加した。この活動で大きな支障となっていたのが白血病治療の途中放棄であった。これを減らすため、遺伝子解析により、予後良好群を発症時に確実に診断し、現地の医師にその結果を速やかに報告するシステムを提案した。2009年にイラクからアルカザイル医師が当科に留学し、坂下一夫講師(現、長野県立こども病院血液腫瘍科部長)とタッグを組んだ遺伝子診断システムが本格的に稼働した。バグダッドなどイラクの5病院から264人の急性リンパ性白血病(ALL ) と134人の急性骨髄生白血病(AML ) の子どもの初診時検体を染み込ませた特殊な濾紙が日本へ空輸され、当科の研究室でDNAやRNAが抽出され、白血病関連遺伝子の解析が行われた。その結果、12%のALL患者や27%のAML患者は予後良好であることが判明し、治る見込みが高い白血病であるため保護者に説得してもらい、治療放棄率の低下に繋げることができた。さらに治療成績を上げるために、日本の支援による骨髄移植センター開設構想に期待したい。 ベラルーシ共和国もイラク共和国も経済的・社会的に混沌としている状況下での医療支援であった。現地では不治の病とされる白血病の子どもを直すことは暗い社会の中で一筋の光明となりうると考え、これまで医療支援活動を続けてきた。これからもこの取り組みが継続・発展していくことを切に願っている。