ブックタイトルグランドゼロ103号
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「グランドゼロ」は、訪問団やセミナーなどJCFの活動の様子、事務局からのお知らせなどを掲載した季刊誌です。
50今号の一冊『神様2011』横山豊子(JCF理事)夏のある日、「熊にさそわれて散歩にでる。」マンションの同じ階に越してきた熊は、階の住人に引越し蕎麦をふるまい、ハガキを配ってまわったという。昔気質なところのある熊だ。越してくる前に住んでいた某町で世話になった人つながりから(ワタシとは)いくばくかの縁があったことがわかる。熊とワタシは互いの距離をそこはかとなしに意識しつつ夏の陽射しの下を水田に沿ってつづく舗装道路を川原へと歩いた。大勢の人たちが泳いだり釣りをしたりしている。「おとうさん、くまだ!くまだよ!近寄り、毛を引っ張ったり蹴りつけたりして、駆け出す子ども。おとなは目を合わせることを避けているふう。川に近づいた熊はいきなりざぶざぶと水に入って大きな魚を掴みどりし、担いでいた袋から出したナイフとまな板を器用に使って魚をさばいて草の上に干した。熊は持参したフランスパンのサンドイッチを、ワタシはおむすびを食べ、昼寝をゆっくりたのしんだ。別れぎわ、部屋の前で「熊の神様のお恵みがあなたに降り注ぎますように」と言う熊と抱擁を交わし、いい具合になった干し魚をいただく。夕食に焼いて食べ、風呂につかり、日記をつけて眠りにつく。神様2011著者:川上弘美発行:講談社定価:800円(税別)