ブックタイトルグランドゼロ103号

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概要

「グランドゼロ」は、訪問団やセミナーなどJCFの活動の様子、事務局からのお知らせなどを掲載した季刊誌です。

49日常の生活が破られ、刻一刻と、事態の進展に釘付けとなったのは、あの三月十一日以来のことでした。「イスラム国」に二人の日本人が拘束された事件です。後藤健二さんは、子どもと大人に向けたその著作の中で常に歴史に翻弄される個人を描きました。学校に行けない少女や、機関銃を担う少年兵と出会い、そこで聴き取った小さき声を、本人に代って世界に伝え続けたのです。あろうことか、我が国政府は、外国人記者クラブで会見したイスラム法研究の第一人者の慧けいがん眼と英断を退け、国民の生命を犠牲にして、強国への追従を採りました。かつてパステルナークが国家から葬り去られたように、今この国でも暴力としての歴史が加速しつつあります。大言壮語の踊る文化の表層を離れ、植物の在り様に倣いつつ、独り《被造物の癒し手》の象しょうを描いてみます。※ジヴァゴは形容詞「生ける、生物の」の生格形これが増子理香さんとの出会いでした。名刺交換を経て彼女が代表を務める『NPO法人ココロとカラダを育てるハッピープロジェクト』の存在をはじめて知りました。『つながろう!放射能から避難したママネット』を母体に生れた「東日本大震災後を共に生きるすべてのいのちが尊重される社会づくりに寄与するため」の活動です。年明けの二月下旬には、副代表の伊藤千恵(ペンネーム・星ひかり)さんのお話を横浜で拝聴しました。三月十一日、郡山市の学童保育所で大きな揺れに遭って以来、母子で県外に避難した日までの出来事を、事故直後数日分の朝刊とスナップ写真を駆使して語られました。私は今まで『原発事故子ども被災者支援法』成立の経緯と未解決の課題について全く無知でしたが、「自主避難者」の口から四年間の個人史が語られるのを聴き、それがどれほど屈辱と苦難に充ちた道程だったかを想像しました。ごく普通の、一介の母親であり主婦であった彼女たちが国政に訴え、署名を集め、集会で発言し、健康診断の機会を提供する活動に奔走してきたのです。『福島に残してきた自分』と『ここにいる自分』とに、自らの存在を分断されたまま。為政者に従順な振る舞いを無言の内に強要する、顔の見えない他者に囲まれながら。