ブックタイトルグランドゼロ101号
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「グランドゼロ」は、訪問団やセミナーなどJCFの活動の様子、事務局からのお知らせなどを掲載した季刊誌です。
46連載随筆宮尾彰美の道~福島県・出会いの旅3~NO.57それは、私が造園業の見習いをしていた時分ですから、今から早や四半世紀ほど前のことになります。知人に誘われて南信州に一泊旅行に出かけ、立ち寄った松本市内の工芸店で、一枚の愛らしい画に一目惚れ。その場で、なけなしの小遣いを叩いて連れ帰りました。画面左上に、青白く光る月が慎ましく浮かんでいます。墨で描かれた深い闇に囲まれた中央には、手漉きの和紙の地がぽっかりと残され、ルオーの好んだ薄緑の線で光輪が縁取られています。一筆で引かれた朱の線が闇に沈む地平の上に、てんでに小さな花をかざした六体のお地蔵さんが横一列に並んで、眼をつむって微笑んでおられます。この『月明り六地蔵』は、父の書斎に納められました。九月上旬、「大熊町ふるさと応援隊」によるスタディ・ツアーのあることを知りました。(次号執筆予定)これがご縁で、福島県田村市で営まれる蓮笑庵「くらしの学校」の活動に回り逢うことになったのです。ホームページを開いた瞬間、思わず息を呑みました。緑滴る木立の奥に、白壁の清楚な家屋が佇んでいます。透明な空気を吸う心地で紹介文を読み進めると、そこに見覚えのある画が溢れているではありませんか。蓮笑庵とは民画家・渡辺俊明が美の浄土を願って作ったアトリエです。(同ホームページ冒頭の紹介文より)今にして思えば、二十代半ばの私には、未だ渡辺俊明という画人の存在も、その生涯を賭けた美の道も、咀そしゃく嚼し、消化することは叶いませんでした。