~イラクの医療危機を探る旅5~

規則をかいくぐって薬品を調達。医療資材購入規則の問題

 

1970年代に制定された政府の現行規則は、アイダーニーのような(公立病院の)医師が機器や薬品を民間会社から直接に購入することを禁じている。

その代わりに公立病院はバグダードの保健省から直接、薬剤や資機材を受け取ることになっているのだ。だが、その保健省はそうした物資を十分に供給できるような財政状況にない。

アイダ-ニー「もしルール通りにやっていたら子供達はあっさり死んでしまうだろう」

そのため彼は抜け穴を使う。つまりクルド自治区から薬品を購入するのだ。クルド自治区は自治権を持ち独自の保健省を擁している。そのためここでは中央政府と並行して輸入される薬品の品質チェックが行われている。

 

クルド自治区エルビルの薬局

 

クルド自治区エルビルの薬局2

 

 

 

クルド自治区で売られる薬品はクルド自治政府によって既にチェック済みであり、承認されている。そのため彼が購入する薬品は一応、『政府(クルド自治政府であるが)』によって認可されたものと見なされるというわけだ。

ヘルスケアに関してはクルド自治区の方がイラクの他地域に比べてまだマシだ。クルド自治区は2003年以後、他の地域で見られたような米国との戦争や宗派対立による荒廃から免れたからだ。

 

 

薬局や医療資材会社が立ち並ぶクルド自治区のメディカルストリート

 

 
クルド自治区にはイラクの総人口の15%から20%に当たる人々が暮らしているが、ここにはイラク全体の心臓疾患センター、またリハビリセンターの1/4、また糖尿病センターの1/3が存在する。

 

またイラクの地域における病床数は1.1床/1000人、また医師は0.8人/1000人であるが、クルド自治区における病床数は1.5床/1000人、医師1.4人/1000人、と多い。

(6へと続く)

写真はクルド自治区エルビルのメディカルストリート。ここにはプライベートクリニックや薬局、医療資材会社が集まる。(写真JCF)

これはロイター通信が作成したイラクの医療事情レポートを翻訳したものです。イラクの医療事情問題の把握にとても役立ちます。

アラビア語版
https://ara.reuters.com/article/topNews/idARAKBN20P1ZF

英語版
https://www.reuters.com/investi…/special-report/iraq-health/

前回までの記事

1 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4456
2 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4504
3 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4521
4 https://jcf.ne.jp/wp/archives/4565

ピンピンひらり

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